第6回 建設業界の流行語について

 2021年の流行語大賞は「リアル二刀流/ショータイム」ということで、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手のすごさを称えるようなものでした。彼の活躍は本当にわくわくするようなもので、毎日彼のニュースを見るのが楽しみでした。大賞に選ばれたのも、当然だと思います。

 さて、日本の建設業界では、2021年、どのような言葉が流行ったでしょうか?勝手に下記のような言葉をノミネートしてみました。

 ざっと思いつくのは、「建築BIM推進会議」、「BIMモデル事業」、「BIMガイドライン」、「建設DX」、「ISO19650」、「遠隔監視」、「デジタルツイン」、「共通データ環境」、「EIR/BEP」、「確認申請BIM」、「プログラムBIM(Forge)」、「建築情報学会」、「現場施工ロボット」、「点群データ」、「維持管理BIM」、といったところでしょうか。  最初に挙げた、3つは、国土交通省の建築BIM推進会議に関わるものです。国土交通省がBIM推進会議を主催し、BIMガイドライン(建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版))を発行し、BIMモデル事業を行うということで、わかりやすい事例を示しているということは、建設業界にとっても大きなイベントですので、建築BIM推進会議の取組みは今後も注目すべきものです。

 さて、建設流行語大賞ですがは、個人的には「建設DX」だと思います。DXとはデジタルトランスフォーメーションのことを指し、その建設業界での取り組みが、建設DXと言われるようです。BIMの先にあるICTを活用した将来の建設業の理想とする姿を建設DXとし、今では、多くの企業がこれを目指しています。

 私も2019年に開催されたAutodesk University2019で、「BIMが進むべき未来への挑戦~建設業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の段階的実現」というテーマで講演を行いました。そこで、完全にBIM移行した先に、そのデータを活用した建設DXという世界が開けてくるといった話であり、私の好きなマイクロソフト社のスマートシティの絵でそのイメージを伝えました。
 

Autodesk University2019で発表したパワポ資料 1
Autodesk University2019で発表したパワポ資料 1


 当時はまだあまり建設DXという言葉がなく、講演でこの言葉を使っていいものかと少し悩んだ記憶がありますが、2021年は第1回建設DX展なども開催されていますので、これは、流行語大賞にふさわしいものではないかと思います。

 しかし、今よく言われる建設DXは、BIMの成長過程の先にあるものではなく、最新のICTの技術を駆使して設計・施工などに活用することを言うようなので、私が2019年に説明した内容と少し異なるようです。私が説明したのは、下図のように、BIMの完全なる適応をDigital Patchとし、Digital integrationを経て、DXへと進化する過程であり、英国のBIMの成熟度レベルをベースにしたものでした。

Autodesk University2019で発表したパワポ資料 2
Autodesk University2019で発表したパワポ資料 2


 私は今でも同じような考えを持っていますが、少し変えたとしたなら、レベル3のeBIMが、情報マネジメントプロセス(ISOO19650の適応)になったことでしょう。ISO19650による情報マネジメントプロセスにより、価値あるデータが作られそれが活用できるようになることが、建設DXの情報基盤となるものだと考えています。

 そういった意味で、流行語のひとつにISO19650を挙げておきました。BIMはツールではなくプロセスだという考えが、このISO19650によって広がってきています。2021年に認証を取得したのは3社でしたが、2022年にはより多くの企業に認証を取得してもらって、来年の流行語大賞を目指したいところでもあります。

  来年、建設業界で流行しそうな言葉として、DfMA、ジェネレーティブデザイン、製造BIM、建設SDGs、情報セキュリティ、ACC(Autodesk Construction Cloud)などを挙げておきたいと思います。建設SDGsという言葉は現時点ありませんが、建設業界での取り組みも加速していることから、建設業界としてのSDGsを考えていくという言葉がでるのではないかという勝手な予想です。

 さて、シミュレーションについては、2021年の流行語として入れていませんでしたが、入れるとしたら、「火災シミュレーション」を挙げておきたいと思います。大阪市北区曽根崎新地のクリニックで起きた放火殺人事件における、環境シミュレーション社のシミュレーション結果は多くのニュースや新聞などのメディアで取り上げられました。一瞬のうちに多くの方が亡くなるという悲惨な事件でしたが、我々建設業界でも、もっとこういったシミュレーションによる考察を行い、被害を最小にするといったことも考えてゆかねばならないのではないかと思いました。また、事件の翌日にはシミュレーション結果が報道されたと言う解析のスピードも驚いたことの一つです。

 今回は私の独断と偏見による2021年の建設流行語大賞について書いてみました。2022年は、建設業界にとって大きな飛躍の年になって欲しいものです。