第22回 ガウディとBIM

 今年、トプコンソキアポジショニングジャパンロードショー2023の仙台・大阪・東京会場で、講演をさせて頂きました。このセミナー&展示会は、トプコンの測量機器や関連ソリューション、マシンコントロール・マシンガイダンスができるICT建機などの展示がありました。講演としては、i-Constructionトップランナーの皆様が、どのようにしてトプコンの測量機器を活用して、生産性向上などの成果を出しているかなどの話があり、i-Constructionについては、かなり盛り上がっているなと感じました。
 このセミナー∧講演会は、主に土木関係の方が来られるということで、いきなり建築のBIMの固い話をしても、興味を持ってもらえないかと考え、「ガウディとBIM」という、少し突拍子もない話から、講演をさせて頂きました。今回は、ここで話をした内容を少し説明させて頂こうと思います。

 今年の8月にバルセロナに行き、サグラダファミリアを見ました。圧倒的なスケール、美しすぎるこの建物に、私自身魅了されてしまいました。この建物は着工してすてに100年以上経つのに、まだ完成していません。なぜ、この建物を作り続けることができたのか、ということを考えてみました。



 ガウディは1926年6月7日に段差に躓き転倒し、そこを通った路面電車に轢かれて亡くなっています。その10年後、スペインで内戦が起こり、ガウディが書いた図面がすべて焼かれ、模型もすべて壊され、建物の一部も壊されました。一時は、建設を中断しようかという話も出たそうです。そこで残ったものは何かというと、建設途中のサグラダファミリアや、これまでにガウディが作った建物だけです。そこで、図面ではなく、建物そのもの、つまり3次元の情報から、ガウディの意図を探り、建設を進めていったのではないかと思います。そもそも、ガウディは建物を作る際に、図面に依存していなかったのではないかと思います。というのは、2次元の図面だけでは、作れるような建物ではなかったからです。



 今、サグラダファミリアの建設に外尾さんという日本人の彫刻家が参加され、活躍されています。彼が書いた本を読ませて頂き、ガウディが、言った言葉を見つけました。「人間は2次元世界を、天使は3次元世界を動く時に多くの自己犠牲、継続する激しい苦悩の後で、建築家は、数秒間天使の3次元性を見ることができた」。「天使の3次元性」というのが何かははっきりわかりませんが、当時の図面という2次元世界から、3次元で空間を自由に飛び回る様をそのように言ったのではないかと思われます。但し、外尾さんは、 「現代のCADは3次元的な図面を見ることができるが、そこに実体のないものは意味がない」とも言われています。「実体のない3次元」、これも興味深い言葉です。確かに、単なる箱のような3次元の形状だけでは、BIMの世界でも意味がありません。発注者から求められる要求に答え、それに応じた形状なり、情報を備えたモデルでなければ、意味がないということではないかと思います。



 100年前のガウディの時代と違い、我々はBIMという技術を手に入れることができました。これは、図面を書くための手段ではありません。建物を作り、そしてそれを運用するための最も有効な手段であるのではないかと思います。だから、我々は、2次元の世界から脱皮して、3次元のモデルを中心に仕事をする必要があるのです。モデル自体が中心にあり、図面はモデルから作られる副産物と考えるべきでしょう。
 また、外尾さんの本を読んでみて、ガウディは建物を作るために「情報マネジメント」を行っていたと思いました。まず、発注者の要求事項を正しく理解していたことです。彼は敬虔なクリスチャンでした。また、当時の枢機卿と密に打合せを行い、それを要求事項として、この建物を設計し、作ろうとしたのでしょう。
 二つ目は、組織です。ガウディの弟子と言える人も何人もいて、その下にこの建物を作るのだと言う強い意志を持った方がおられました。この方々がガウディの遺志を継いで、この建物を作ったのです。いつも思うのは、建物を使うのも、建物を作るのも中心にあるのは人であるということです。ガウディはここで働く方々のために、私財を投じて学校を作りました。そして、ガウディが亡くなる日、職場を後にするとき、「明日もいい仕事をしよう」と言われました。これが最後の言葉のようです。
 そして、コストマネジメントです。この建物を作るのには莫大なお金が必要で、募金活動などもされたようですが、単に贅沢なものを作ったわけではないと思います。
 タイムマネジメントについては、ガウディは「この建物はいつ完成するのですか?」と聞かれた時、「神は急ぎません」と言ったそうです。これはだらだらと建物を作ることではなくて、作ること自体が祈りだったのではないかと思うのです。そしてこれも発注者の想いと同じだったのではないかと思います。



 サグラダファミリアに、多くの斬新な技術が使われたことも有名です。例えばフニクラです。これは、逆さ吊り模型で、紐に錘を下げてできる曲線をモデル化して設計するというものです。この独創的な技術で、垂直でない柱で大空間を作るということができたのだと思います。
 さらに、サグラダファミリアの展示室の奥に3Dプリンタの部屋を見ることができます。このような3Dプリンタや3D構造解析技術、CNC工作機などが使われており、これら最新の技術で、サグラダファミリアの工期を短縮することができたと言われています。



 ガウディがBIMのことを知ることが出来たら、何と思ったのでしょうか?きっと新しい時代の到来を喜び、嬉々としてこのプロセスを活用したのではないでしょうか?
 マリアの塔は完成し、その頂点には巨大な星が光り輝いています。そして、イエスの塔は2026年に完成すると言われています。完成したサグラダファミリアも見てみたいものです。



 我々は、サグラダファミリアのような建物を作っている訳ではありません。でも、建物を作るという行為は同じだと思うのです。発注者の要求を叶える建物を作るために、情報マネジメントを行い、工夫をしながら最先端の技術をどんどん取り入れてゆかねばなりません。2次元で建物を作る時代に決別して、3次元そしてそのモデルを軸に4~10次元で、建物を作る時代を受け入れなければならないでしょう。
 そんなことを、サグラダファミリアでこれらの写真を撮りながら思っていました。