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BIMと熱流体解析の連携で大手に負けない提案力を 小規模設計事務所でのWindPerfectDX活用法
建物を3次元モデルによって設計するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を武器とする建築設計事務所、ビム・アーキテクツは、環境シミュレーションの熱流体解析(CFD)ソフト「WindPerfectDX」 を活用。設計コンペや国土交通省のBIM試行プロジェクト、海外工事などで設計の初期段階でCFDを駆使し、大手事務所並みの提案やプレゼンテーションを行っています。建物の安全性や環境性能が強く求められている今、建築設計事務所にとってCFDは必須のツールと位置づけ、スタッフ全員による活用を目指しています。(取材:建設ITワールド 家入 龍太氏)

ビム・アーキテクツに導入されたWindPerfectDX

 

1ヶ月かかっていたコンペの資料作成が1週間に

 東京・目黒区のビム・アーキテクツは、スタッフ数7人と小規模ながら、全員が一級建築士という少数精鋭の建築設計事務所です。 その名の通り、2008年の設立当初からBIMによる設計を売り物にしています。
 意匠設計で主に使っているBIMソフトは、「Revit Architecture」ですが、同事務所では環境シミュレーションのCFD解析ソフト「WindPerfectDX」 を設計の初期段階から活用することで、BIMの強みをさらに発揮しています。
 例えば、2011年6月に実施された「新山口駅表口駅前広場整備設計プロポーザル」では、駅をまたいで流れる風の方向や速度の分布をWindPerfectDXで解析し、人が快適に感じる風速1.6m/秒のそよ風ゾーンを阻害しないように、駅前広場につながるビルや歩行者デッキを覆う屋根の形状をデザインしました。

 

新山口駅前広場の設計プロポーザルにおける設計の流れ。CFD解析に よってそよ風の流れを阻害しないように屋根のデザインを決めた

 

 つまり、目に見えない風の流れに基づき、建物や構造物のデザインを決めるという、新しい意匠設計手法を実践したのです。CFDはこれまで大手の建築設計事務所や建設会社でさえ、研究所の専門家に依頼して行う難しい解析でしたが、ビム・アーキテクツはWindPerfectDXを活用することで、大手顔負けのプレゼンテーション力を発揮しました。
 設計案の内容は、設計根拠となった風速の解析結果やBIMモデルから作成した駅前広場の全景や建物の外観、内観のパースとともにプレゼンボードにまとめました。 驚くべきことに、その資料作成はわずか1週間で完了したのです。

 

プロポーザルで提出したパネル。
BIMの活用でCFDのほかCGやパネルの作成も内製化したため、従来は1ヶ月かかる作業が1週間で終わった

 

「もし、CFD解析を外注していたら1ヶ月はかかっていたでしょう。CFDの外注費は複数のプランを検討すると100万~200万円程度かかることもあります。WindPerfectDXを導入し、CFDを内製化したおかげで、今回のような提案が可能になりました」と、ビム・アーキテクツ代表取締役の山際東氏は語ります。

仮想コンペでBIMツールとの連携性を確認

 同社がWindPerfectDXを導入したきっかけは、BIMを駆使して48時間という短時間で課題の建物を設計する国際仮想コンペ「Build London Live 2009」にチーム「BIM Japan」のメンバーとして参加したときでした。このチームには環境シミュレーションも参加し、BIMモデルを基にCFD解析を行ったのです。その結果、BIM Japanは見事、優勝しました。
 「Revit Architectureで作成したBIMモデルをSTLというファイル形式に変換し、WindPerfectDXでCFD解析を行ったのですが、データ連携がスムーズに行えることが分かりました。 そこで自社でも導入を決めました」(山際氏)。


  • BIMの国際仮想コンペ 「Build London Live 2009」 における 熱環境シミュレーション (左) と設計した建物のパース

 

 2010年以降は社内でCFD解析を行うようになりました。2011年に兵庫県の神戸ポートアイランド内の敷地を舞台に行われた「Build Live Kobe 2011」では、設計の初期段階で課題の「国際交流センター」の建物群を敷地内に分散配置したプランを7通り作り、夏の海風、冬の「六甲おろし」による建物周辺の風をWindPerfectDXで解析。空調や照明などのエネルギー消費量解析とともに検討し、最適な建物配置を決めたのです。
 2010年度、国土交通省がBIMの試行プロジェクトとして行った新宿労働庁舎の設計業務では、元請けの梓設計にビム・アーキテクツが協力する形でCFD解析を行い、階段室に煙突効果を持たせた自然通風性能や建物内部の風の動き、隣接マンションへの気流の影響などを初期の基本計画段階で確認しました。

 


Build Live Kobe2011で行った複数の建物周りを流れる風の解析



48時間の間には、7通りの建物配置について卓越風の影響も解析し、設計に反映した


  • 最終成果品として提出したCGパース

 

BIMの活用意義を明確にするCFD

 BIMとの連携が可能なCFDソフトはほかにもありますが、ビム・アーキテクツがWindPerfectDXを選ぶ決め手となったのは、輻射熱を考慮した計算に対応していることでした。ヒートアイランド解析や室内のペリメーターゾーンの気流解析には輻射熱を考慮する必要があるからです。
 山際氏はCFDを自社で行う意義について、「小さな事務所でも大手に負けないプレゼンテーションができることですね。そして、BIMの活用効果を施主に対して明快に見せられることです。 建物周辺の風の流れは建物の外形だけを3次元形状で表した『マスモデル』の段階でも解析できます。例えば、駐輪場を設置する場所の風が強すぎて自転車が倒れないか、といったことも設計の基本計画段階で分かります」と明快に語ります。



ビム・アーキテクツのオフィス。 WindPerfectDXによるCFD解析によって、風の流れ のイメージは他の設計者とも共有できる。 左側が代表取締役の山際東氏

 これまで、設計者は建物内外の風の流れを直感的につかみ、設計を進め、最終段階で解析によって確かめることが一般的でした。しかし、設計者の頭の中にある風の流れのイメージを施主やほかのプロジェクト関係者と共有することは難しかったのです。CFDを使うことで、設計者は風の流れを関係者に説明できるアカウンタビリティーを手に入れられます。
 また、プロの設計者の直感も、間違うことはあります。そよ風を室内に導入しようとルーバーを付ける設計にしたところ、実際には突風のような強い風が吹き込んでしまった、というような場合です。こうした問題点を残したまま設計を進めることのないように、リスク管理の観点からもCFDの活用は有効です。


  • 設計者の直感も時には間違うことがある。CFD解析(左)と意匠設計(右)を並行して行うことで問題点を残したまま設計を進めることがなくなる

CFDを武器に海外プロジェクトにも参入

 「設計段階で発生する打ち合わせの8割は、図面などの不整合に関するものです。 BIMモデルによって設計を進めることで、設計効率は大幅に高まります」と山際氏は言います。
 仮想コンペBLK2011では、ビム・アーキテクツが中心となり、約20社でチーム 「PLAN-B」 を結成しました。各社と設計を分業し、統合するワークフローでは、図面は使わずにBIMモデルで行いました。その結果、打ち合わせはほとんど必要ないことが分かったのです。



Build Live 2011ではBIMモデルを使って20社と設計の分業・統合を行い、生産性の高さを確認した


 BIMとCFDを武器に、海外プロジェクトにも参入し始めています。「海外の建築設計事務所はCFDを行っているところはあまりないようです。そこで、海外の施主に対して設計案とともにCFD解析結果を見せることは分かりやすく、説得力もありとても効果的です」と山際氏は説明します。
 ビム・アーキテクツでは、BIMツールによる設計とWindPerfectDXによるCFDの活用をさらに進め、大幅な生産性の向上を図るとともに、海外展開などによる新規市場開拓戦略を推進していく方針です。

取材協力:株式会社ビム・アーキテクツ

設立:2008年7月

代表取締役:山際 東

スタッフ:6人

有資格者:一級建築士7人

所在地:東京都目黒区中央町1-16-14 飯島ビルpart3 2F

TEL: 03-6303-3768

ホームページ: http://www.bimarch.com/

取材にご協力頂きました、山際様はじめ社員の皆さま、誠にありがとうございました。